2009-03-29

制作ノート:「夕坂童子」録音編

録音日時:
2009年2月1日 9:00〜21:00

録音会場:
於、調布市・北部公民館

使用機材:
マイク SEIDE PC-VT2000、SHURE SM57
マイクプリ/DA M-AUDIO MOBILE PRE USB
DAW Apple Logic Pro 8、Apple Mac Book Pro / Intel Core 2 Duo 2.4 GHz / 4GB メモリ

この日の主な作業は、首藤幹夫さんからのサジェスチョンをもとに、劇団唐組「夕坂童子」のもう一つの劇判ともいえる楽曲を、須藤かよさんのアコーディオンで演奏してもらい、それを僕が録音する、というもの。

楽曲的なテーマは大きく二つ。
ひとつは芝居の中で実際に使われている既存の曲をぼくらなりの解釈で吹き込む。
もうひとつは首藤幹夫さんの幻燈としての「もうひとつの夕坂童子」を作り上げあげようというものである。

作業は午前と午後のセッションに分け、午前はテーマのうちの前者、午後に後者、というスケジュールでのぞんだ。

さて、アコーディオンには通常の鍵盤がある右手側と、ボタン式の鍵盤がある左手側にそれぞれ、音の出る部位がある。
ちなみに、一般的にみかけるそうした形のアコーディオンを「ピアノ・アコーディオン」と呼び、両方の鍵盤ともボタン形式なものを「アコーディオン」または「ボタン・アコーディオン」と呼ぶのだそうだ。

今回の僕のプランとしては、できるだけ臨場感があるように音源を作ろうと思っていた。それこそ、本当に目の前で演奏しているかのような、リアルな音場を作ろうと考えていた。

鍵盤を押すときに微妙に発せられる「スコッ」という音、蛇腹でブレスするときの音の途切れ具合までを、できるだけ余すところなく収録しようと思っていたのであった。

でまずは須藤さんに音出ししてもらい、音が出ている付近に耳を近づけてマイクポイントの確認。

ちょうどよいポイントが判ったので、右手側にコンデンサマイクの SEIDE を、左手側にダイナミックマイクの SM 57 をそれぞれ向けた。

MOBILE PRE USB のゲインレベルは、SEIDE チャンネルが 10 時、SM 57 チャンネルが 3 時、というのが基本。

これはコンデンサマイクとダイナミックマイクの違いによる入力レベルの相違による。

あまり SM 57 のゲインを上げると S/N が悪くなってしまうが、ある程度までなら後で Logic のプラグインで対処できるのでヘッドフォンで音をモニターしながら慎重にレベルを合わせた。

まずは午前のセッションに、稲荷卓夫さんが劇中で歌っていた楽曲のアコーディオンバージョンを録音。

首藤さんのリクエストに応じての、須藤さんの素晴らしい演奏。

あとでプレイバックしてる最中、おもわず涙がこぼれたね。

須藤さん、やっぱりすごい。

午後のセッションは、ひたすら、妄想の世界。
ありものの世界に、かつてはなかったものを突っ込んで行く。

一曲だけ、ぼくのギターとのセッションを同録で録音。

この時は SEIDE をアコーディオンの中央に、SM 57 をギターのネックの付け根付近に向けた。

ギターを入れたのは、唐十郎さんが登場するシーンでの楽曲であったが、ここは首藤さんのリクエストによって「ボレロっぽく」演奏。

ぼくは、ただひたすらジャッキジャッキとギターをかき鳴らし、須藤さんの哀愁感たっぷりのテーマ部分、そしてエモーショナルなアドリブ部分が、凛とした世界を築いて行く。

演奏が終わり、Rec 状態を停止したとたん、そばで聴いていた首藤さんが思わず「いえい」と口走ったのが良かったなぁ。

そのくらい、気合いがこもったいい楽曲になりました。

そういえば、今回のセッションで、首藤さんからのリクエストを訊いて、須藤さんとぼくとが具体的にどんな感じの楽曲にしようか、という会話をしている中で、あそこはイナタイ感じで~、とか、アウトロは打ち放しで~、なんて言葉が出てくるたび興味津々な首藤さんが「イナタイってなに?」とか「アウトロってなに?」といったかんじで質問してくるシーンがあった。

あとで、それらの用語解説が首藤さんのブログに載っていたので、思わず微笑んでしまった。。

ぼくも、いろんな業界のジャーゴンは興味があるので、首藤さんの気持ち、判るわかる。

さて、一日の録音セッションが終わり、あとは自宅に持ち帰ってミキシング作業が待っているのであった。

0 件のコメント: