2009-10-22

vessel of a leaf のリリースにあたり(その1)

いま思う所感や制作工程、曲解説などをちょっとずつ書いてみようと思う。


最初に出来上がったのは、M-2 であった。

この曲は、2006年にブラジルを旅し、日本に帰ってきてしばらくしてから発想した曲だ。

ブラジルの音楽を聴いて感じる「なんとなく憂う感じ」とか「躍動感」ってなんだろうと考えはじめ、あっちで買ってきた何枚かの CD をただひたすら聴いた。

そしてぼくが「ブラジル音楽のエッセンス」として想起したヴィジョンは、「水平線」であった。

左右東西まっすぐ一直線に伸びる線。

日本の福島で育ち、その後は大阪や東京でしか暮らしたことがないぼくからみて、始点終点をもたないまっすぐなただの水平線からは「不安」を感じる。

しかしながらブラジル音楽からは「不安」を感じないのだが、それはなぜかと思うに、よく吟味された 7th 系コードや、一聴するとジャストの拍ではないように聴こえる複雑なリズムなど、これまで培ってきた人間の知恵で美しくコーティングされているからではないか。

まっさらな自然界では、生き物はそれに畏怖し、ときには不安にかられることもあるだろう。

だから、人間は不安を克服するために道具を開発し、文化を育ててきた。

そうした人間臭さが、「水平線」というまっさらな自然を覆うことで、憂いや躍動を感じたのだ。

それで、ぼくはあえてブラジル風な「水平」をテーマにした曲を作ってみようと考えた。水平線ではなくて、水平。

線、というのは、音楽的にとても表現しやすい。

だから、状態を指す「水平」に言葉を換え、抽象化した。それならトライしてみる価値があろう。

初期の頃は、もっと装飾がない水平さであったのだが、そこに波打ちや月日の登り降りを付け足した末、最終的にあのような楽曲になった。

だから、いまの M-2 には、ぼくとしては「水平」のイメージはところどころしか見えない。

でも、それでいいのだ。

こんな具合に、曲のテーマを考え実際に構築していくとき、ぼくはいつでも「想像連想ごっこ」をしている。

タイトルは、そうした「ごっこ」から取った。


つづく。

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