首藤さん曰く、ぼくは「ハマりやすい体質」なのだそうだが、なかば自覚はしつつも、いや今回のはそうでもないと思う。
結果、初日、二日目、の二回、荻窪に足を運んだのだが、ハマった、というよりも、一回だけ、というのが勿体無い、というのが正直なところ。
鳥山さんの、泉鏡花に対する愛情というか情熱というか執念のようなものはもちろん熱いものが伝わってきて素晴らしいのだけれど、何よりも、鳥山さんの表現そのものが、ものすごく、面白いのだった。
劇中で流れる、市丸さん(!)が歌う「三味線ブギ」にあわせて踊る境賛吉。
もちろん、ここは鳥山さん一流の演出なのだが、三味線ブギの境賛吉は、境であって境でなくなるように思う。
鳥山さんという語り部による、余談か。
あるいは、ちょっとした幕間劇のようなニュアンスもあったかと思う。
このあと、徐々に「お艶さん」の影がちらつき始める。
こうした「ブリッジ」の使い方は、市川崑監督による横溝正史の映画作品と、なんとなく近いものを感じる。
その意味で、とても「映画的」だと思ったのだ。
公演の会場が、これまた良かった。
昭和初期の雰囲気というのは、個人的に普段はそれほど思い入れはないのだけれど、それでも実際にそうした場所に足を踏み入れると、いろいろと感じ入ることは多い。
僕は、自分の前世を大正後期〜昭和の売れなかった探偵作家だと勝手に思っているのだけれど、開演前にロビーで煙草を吸っているときに、なんか昔ここに来たことあるかも、というような既視感があったのが面白かった。
どてらに外套をまとった鳥山さん、ものすごく素敵でした。
舞台のロケーションや造作も、大変に素晴らしかった。
それらの大道具小道具を活かし、鳥山さんの堺賛吉はほんとにそんな人が目の前で語っているかのように、迫力満点であった。
芝居のベースは、鳥山さんのコミカルな語り口なのであった。
そこに、時折挟み込まれる「ゾッと」させる口調、表情。
このバランス配分が、絶妙。
最後は、背筋がゾッ、っとなって終わるのだが、鳥山さんのハケ方が、格好良い。
ほんと、良いもの観させてもらいました。
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