2018-10-28

ヘルミ再訪、タジュリーシュ、音楽教室巡り、テヘラン最後の夜

朝、北川くんを見送り、身支度を始める。

ここで、ちょっとした問題発生。 ひさしぶりにかなり重い便秘に罹っていた。 とりあえず水分を摂らないと、と、あるだけのペットボトル水をがぶ飲みするが効果なし。 もっと水分はないか、と探すと、冷蔵庫の中に残っていたノンアルビールを発見し、それも一気飲み。 下っ腹をばんばん叩いたりタバコを吸ったりヒンズースクワットをやってみたりしているうち、1時間ほどかかってようやく安産。。 辛かった。

そんなことで余計な時間を食ってしまい、慌てて準備を済ませ、タクシーを拾ってヘルミを目指す。

が、タクシードライバーのおじいちゃんには不案内なエリアだったらしく、車を停めては道行くひとにヘルミの名刺を見せて「ここどうやって行くんだ?」と訊きまくる。。 ありがとう、おじいちゃん。

しかし、朝飲みまくったノンアルビールのせいで放尿欲がむらむらときてしまい、もうすぐ噴水ショーが開幕するかも、、という寸前になってようやく目当ての場所にたどり着いた。 ギリギリセーフ。。



「トンバケスタン」のピンポンを鳴らし、玄関を開けていただくなり、「トワレット、コジャースト?」(トイレ、どこですか?)と、「旅の指さしペルシア語」に書かれていた例文を棒読みしてすぐに厠へ直行、でことなきを得た。

地下にある工房に通してもらい、職人のホセインさんが黙々と作業する様子を見学させていただく。

たしか昨日、ヘルミーさんの話では「ウチでは一個に 10分もかけないぞ」とおっしゃっていたと思うのだが、実際には 10分間に 3個の皮張りを終える勢いであった。



皮の湿らせ具合、糊の量や塗り方、皮の固定の仕方など、つぶさに観察させていただいた上、張る時のポイントとなる要所では実際にその部分を触らせてもらえた。これはかなり重要な情報として伝授させていただいた。

ありえないくらいの貴重な現場を拝見させてもらい、ホセインさん、お店の方々に丁寧にお礼を伝え、ヘルミを後にする。


ヘルミの周辺を少しだけ散策。




昼前、タクシーを拾ってパークウェイまで移動し、いったん BRT に乗ったのだがあまりの渋滞でバスはまったく動かず。 途中下車して 10 分ほど歩き、「International Centre for Persian Studies」(Dehkoda)に到着。

ここ「デホダ」に通う紗和子ちゃんと落ち合い、歩いてタジュリーシュへ。

「Shemroon Kabab」という店に入り、豪勢にキャバーブで昼餉。



朝から何も食べていないし、「栓」が抜けたあとでもあり(笑)、かなりの空腹状態ではあったが、無理しないと完食できないほどの量であった。 完食したけども。


バザールの中心にあるショッピングモールに移動し、6F のフードコートに行ってみると、先日の盲目のタール奏者がちょうど演奏している最中であった。



一曲演奏が終わり、投げ銭を入れに行こうとしたとき、フードコートのお兄ちゃんが盲目のタール奏者に「ご飯の用意、できたよ」と呼びにきた。 じっと成り行きを見ていると、お兄ちゃんは、集まったお金を胸ポケットに仕舞ったタール奏者の腕を支えて食事が置かれたテーブルまでエスコートし、奏者が席に着くと右手にナイフ、左手にフォークを添え、「ゆっくり食べてってね」とかなんとか言ってその場を離れていった。

ああ、なんということでしょう。 この光景を見ていて、また泣かされてしまった。 


先日、ナーセープール先生のお宅まで歩いている時に見つけた「偽アップルストア」でお茶でもしようかと、紗和子ちゃんと散歩がてらぶらぶらと歩く。

ところが、着いてみるとなんと映画の撮影にお店が使われており、今日は一般客は入れないとのこと。



事情を教えてくれたプロデューサーだか監督だかわからないけどとにかく責任者っぽい方と話していると、その方いわく、「映画はシリアスな内容のもので、日本人の建築家の役をやってくれる役者を探していたんだけど見つからず、中国人の役者に頼んだんだよ」だそうだ。 ほう、それを日本人の俺に言うか。


ふたたびバザールまで歩いて戻ると、盲目のタール奏者が今度はストリートで演奏をしていた。

紗和子ちゃんと縁石に座り、しばし彼の演奏にじっくりと聴き入る。

すると突如、紗和子ちゃんが「あっ」と叫んだ。 何が起こったのかと思ったら、通りすがりの浮浪者が、タールのケースに置かれていた投げ銭を一掴み握りしめて立ち去ろうとしていたのだった。 

あっ、と俺も息を呑んだ瞬間、近くの路上でサングラスを売っていた若者が浮浪者に駆け寄り、握っていたお金をサッと奪い取り、タール奏者に寄っていって「ここで演っていると盗まれるぞ。 早く仕舞えよ」 とかなんとか声をかけ、タール奏者は礼を言って戻って来た金を懐にしまうとまた演奏を続けたのであった。

ものの 10秒もかかっていないあいだに起こったこの奇跡のような現場を目撃してしまい、俺はまた泣いてしまった。 このタール奏者に泣かされたのはこれで3度目。


夕方、もはや馴染みとなったカフェに入って一服。 そこに仕事を終えた北川くんも合流し、まずはタジュリーシュバザール内にある、シャムスアンサンブルに所縁のある楽器屋に行きましょう、となった。

ん? バザールにはもう何度か来ているけど、楽器屋なんてあったっけ?

と思ったら、馴染みのカフェの裏側出口を出てすぐの、かなり死角になっている奥まったエリアにその店はあった。 びっくり。



ここは、バーレースターンの楽器屋「アーレフ」やヘルミとは違い、ちゃんとショウウィンドウもある普通の楽器屋なのだが、やっぱり単独では見つけられなかったなぁ。

店主の方に、紗和子ちゃんが探している音楽教室の候補になりそうなところを教えてもらい、さっそくバスに乗ってその音楽教室に移動。

北川くんが、教室の担当者や先生方と紗和子ちゃんとのやりとりをサポートしている間、俺は待合室で待っていた。 すると、いずこから「バハーレ・デルキャシュ」の歌声が聞こえてきた。 もうすぐテヘランを後にするというこのタイミングで、なんだか贈り物をいただいてしまった気分。 ほんとに良い曲だし、この時歌っていた先生や生徒さんの声もとても素晴らしかった。


教室を後にし、歩いてすぐのお店に入ってイスタンブールの歩ちゃんへの土産にサンギャクを購入。



しかし、でかい。 買ったお客さんは、店の前にある台の上で、慣れた手つきで持ち運びやすい大きさに折り畳み、さっさと帰っていく。


タクシーに乗り、紗和子ちゃんをお住まいの近くまで送り、北川くん宅に戻る。


荷物をまとめ終えると、寂しさが襲ってきた。


北川くんには、この一週間ほんとうにお世話になりました。 こんな素敵な旅になったのはすべて北川くんのおかげ。 また、日本で会いましょう、ととりあえずのお別れをして、タクシーに乗ってエマーム・ホメイニー空港へ。


夜中、がらん、とした空港で、特に何もするでもなく、ぼうっと放心したまま、イスタンブール行きの搭乗時間を待つ。



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