2009-10-22

vessel of a leaf のリリースにあたり(その3)

M-4 のタイトルは「存在論」という意味。

江戸川乱歩氏の有名な「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」という言葉。

一見パラドキシカルなこの一文は、しかしながらぼくとしては言い得て妙である。


量子の世界では、光は波動でもあり粒子でもあると考えられているらしい。

光が無ければ、ぼくたちはこの世がどんなものなのかを視覚的に認識することができない。

その光は、科学というレンズを通すと、存在方法が変わって見えるという。


端的に言ってしまえば、持続音を奏でるチェロの音は波であり、ときおり不定期に音を立てるピアノは点(粒)だ。

だけど、二つのキャラクターはまったく別個であるために、たとえば光のように一つの対象物の別の側面だ、という捉え方は普通しないだろう。

乱歩のいう「うつし世」とは、ぼくにいわせればチェロとピアノの音色を同時に奏でるものらがたくさんうごめく世界だ。


ぼくたちは、視覚、聴覚、触覚などを駆使し、自分以外のなにものかの存在を認識する。

互いに互いを確認しあうことで世界が形成される。

自分以外のなにものかを認識したとき、「存在する」ということについて考えてみたくなる。


そしてできたのが M-4 だ。


よるの夢には、音楽は鳴らない。

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